日本政府のパッケージ型インフラ輸出の全体像については、以下の弊ブログでご報告していますので、まずは、こちらをご覧ください。

日本政府のパッケージ型インフラ輸出政策のまとめ(上)

政策が固まった経緯 – 日本政府のパッケージ型インフラ輸出政策のまとめ(中)

製品輸出ではなく投資事業 – 日本政府のパッケージ型インフラ輸出政策のまとめ(下)

昨年後半(2010年後半)にまとまった政府によるパッケージ型インフラ輸出の支援の対象になるスキームを示したのがこの図です。1つ前のスライド、商社による2000年代のコンセッション受注と、ほとんど同じ形です。

政府のインフラ輸出支援策のキモは、日本企業によるインフラ輸出に金融面の支援を付けることにあります。具体的には、インフラPPP案件の成立のカギを握る、数十億円〜数千億円の資金調達の何割かを担うプロジェクトファイナンスにおいて、日本政府系の国際協力銀行からの融資を付けるということです。

 

もう少し詳しく説明します。外国政府が実施するインフラPPPでは、数十億円〜数千億円の初期投資額の調達は、受注した民間企業側に任されます。一般的な案件では、過去に類似のプロジェクトを受注した経験のある企業複数がコンソーシアムを組み、受注します。従って、プロジェクトファイナンスにより貸し出す銀行団の側も、借り手が“新参者”ではないので、一般的な貸出手順(デューデリジェンスなどの審査プロセス)により、基準を満たしていれば貸し出します。

インフラ案件のプロジェクトファイナンスは、貸出額が巨額になるため、日本だけでなく、欧州や米国の銀行も加わり、だいたい10行ぐらいでシンジケートを組んで巨額の貸出額を満たします。貸出がクロージングするまでのやりとりはすべて、英語ベースのインターナショナルスタンダードに則ったやりとりとなり、過去の経験がないと、おそらくは大変に時間のかかるプロセスになると思われます。

ここで、日本企業が関わる案件において、政府系の国際協力銀行が、政策の後押しにより、主幹事行となり、プロジェクトファイナンスの組成をリードしてくれることによって、日本企業は多大な恩恵を被ることになります。そうした後ろ盾がなければ、クロージングにまで至らない可能性のある融資において、(プロジェクトの収支見通しが一定の条件を満たしていればという条件付きですが)、クロージングのメドが付きます。仮に、プロジェクトファイナンスがクロージングしなければ、せっかく競争入札に勝っても、コンセッション(得られた営業権)を返上しなければなりません。違約金が必要な世界になってしまいます。

日本の商社が関わるインフラ案件では、国際協力銀行が貸し出しを行うものについては、三菱UFJ、三井住友、みずほのメガ3行がシンジケートに加わることがよくあります。国際協力銀行による支援は、そうした邦銀の融資の呼び水としても意味があります。

このプロジェクトファイナンスは、前述のように、貸出の大前提として、特別目的会社が設立されており、キャッシュフローと担保(インフラ施設と営業権)とが、特別目的会社にひとかたまりになっていることが求められます。そうした要請から、このようなスキームにならざるを得ないのです。

また、これが、インフラPPPのインターナショナルスタンダードであるので、日本政府の支援が、このスキームに対して行われることは、大変に現実的です。

また、インフラ案件のプロジェクトファイナンスでは、長期にわたるプロジェクトの営業期間において顕在化する可能性のある様々なリスクに関して、プロジェクト保険を付けるのが普通です。ここにおいても、政府のインフラ輸出支援策には、政府系の日本貿易保険による保険を付けることが組み込まれています。正確に言えば、過去には付保の対象にならなかった部分をもカバーすることになりました。

これにより、貸し出す側では、貸し倒れ(返済不能)のリスクが緩和されるため、より安心して貸し出すことができます。

図の特別目的会社の中の部分を見ると、「株式」と「負債」に分かれています。この負債部分が、銀行団によるプロジェクトファイナンスです。株式の部分は、受注したスポンサー(コンソーシアム)が出資します。通例、初期投資額の最低でも2割に相当する金額の出資が求められます。銀行団によって、プロジェクトのリスクが高いと判断されれば、それ以上の積み増しの出資を求められるケースもあります。

また、出資者として、スポンサー以外の当事者、たとえば、インフラファンドなどが出資するケースもあります。

「オペレーションをどうするか?」ということも、非常に重要な問題です。

日本政府によるインフラ輸出政策で想定されているのは、水なら水関連の機器メーカーがオペレーションのノウハウを持つ日本系の主体(例えば自治体など)とコンソーシアムを組んで受注する形態です。

それ以外では、現地のオペレーション会社や、国際展開を行っているオペレーション会社との提携という形もあるでしょう。オペレーションの手当はもちろん、入札前に行っておくべき事柄です。また、オペレーション体制ができあがっていない状態で入札しようとしても、おそらくは、事前に行われる資格審査(Prequalification)を通らないと思います。

このスライドでは、日本政府のパッケージ型インフラ輸出政策を活用する場合のメリットを挙げています。

大事な部分は、1つ前のスライドでご説明しましたので、ほとんどの項目については、読んでいただければご理解いただけるかと思います。

諸外国によるインフラPPPのトレンドは、入札者が限られるクローズドな形から、よりオープンな競争入札へと変化しつつあります。従って、従来、商社が中東、アジア、南米などで現地の政府と長い期間をかけて関係構築を行ってきた…というような経験がなくとも、競争入札に参加できる案件は増えています。

しかし、一方では、インフラ案件では、できるだけ早い段階で情報を得て、競争入札に向けた準備ができるに越したことはありません。そういう意味で、相手国との関係づくり、情報入手活動を、日本政府が行ってくれるというのは大変にありがたいことです。

個々の国にアプローチする場合は、現地国のJETROの窓口に問い合わせることから始めるとよいでしょう。大型の案件の場合は、日本の国際協力銀行で地域別の窓口がありますので、そちらで相談することから始めてみるとよいと思います。政府系の窓口は、基本的には日本企業の諸外国における展開を応援する立場ですから、使える窓口はできるだけ使って、案件受注の筋道を堅くするのがよいと思います。

「フィージビリティスタディに国の予算が使える可能性がある」ということについては、後のスライドでご説明します。